忍者ブログ
理系の若者が思ったことを書くブログです。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 私達は、放射線によってDNAに傷がつくと危険であると誤解しがちだ。しかし、その認識は注意しなければいけない。何故なら細胞生物学、あるいは分子生物学の研究の結果を考えると無害化できる量が存在するからである。これについていくつか議論をまとめよう。


①DNAの傷は、放射線によらず人体で膨大な量発生する。

 近年の分子生物学の知見を統合すると、酸化的代謝で発生する活性酸素によってもDNAの傷がつくのである。しかもその傷の数は膨大であり、一日に百万個も存在する。そのうち、危険だと思われていたDSB(DNAの二本鎖切断)の発生確率は、
自然放射線に対して1/1000の確率だと見積もられている。

 こういった意見はポリコーブによってまとめられている。WEB上でもポリコーブの論文訳を読むことが可能である。ポリコーブらの論文を読んでみよう。
===============================
ソース⇒低線量放射線に対する生物応答

 普通の細胞は常に傷害性・毒性のあるものにさらされている。これは酸化的代謝による活性酸素の発生、微量栄養素の欠乏、環境からもたらされる様々な化合物などによる。ひとつの哺乳類の細胞には1日に100万個のDNA傷害が発生すると見積もられている。ほとんどのDNA傷害は効率よく修復されるが、修復は完全でなく、1日に細胞当りひとつのDNA変異が残されると見積もられている。これらのDNA変異は自然発生のがんや老化の原因となっていると考えられている。
 一方、2mGy/年の被ばくは1ナノグラムの組織に対して一年に2回のヒットをもたらす。つまり6ヶ月に1回細胞にヒットが与えられる。この低い頻度によるDNA変異の確率は、放射線照射以外の自然発生的なDNA傷害と変異の発生確率に比べればオーダーはいくつも低いものになるだろう。このことは、電離放射線のヒットによってDSBができる確率は、酸化的代謝による活性酸素によりDSBができる確率の105も大きくなると見積もられるのに、実際の自然放射線によるDSB発生確率は、活性酸素によるDSB発生確率の1000分の1ほどに過ぎないと見積もられる、ということからも明らかだ。  

=================================

 こういった事実を見ると、どうも放射線によってDNAに傷ができたから危険という論理は必ずしも成り立たないし、破たんしている。DNAの傷を考える際に自然発生との比較を行っていないからである。

※例えば、自然に酸化的代謝で生じるDNAの損傷量をx個、ある量の放射線を浴びて生じるDNAの損傷量をy個とすると、x>>yであるならばyの影響は無視できると考える方が自然ではないだろうか。従って、放射線を浴びれば浴びるだけ危険とする論は変な意見だと思う。

②低線量放射線の効果は傷をもたらすだけでなく、修復も加速させている。

ポリコーブらはさらに面白い意見を提示している。下記に引用しよう。

===============================
ソース⇒低線量放射線に対する生物応答

1つまたは何百もの低LET粒子のヒットによって以下のような適応応答およびDNA傷害が観察されている。

(略)

高線量照射(1-4Gy)や他のDNA傷害物質による染色体異常を抑制する。この防御も4時間で最大となり、3日間持続した。ここではDNA修復速度が照射しない場合の数倍早くなっていると考えられる。

免疫系による傷害(細胞)の除去。ここには細胞障害性リンパ球の増加が関与しており、がんの転移を抑制することも見られる。これは数週間持続する。

アポトーシスの誘導。普通は高線量照射後数時間でおこる。低線量照射によるアポトーシスの誘導が、傷害細胞のがん化抑制の主要な原因だろう。

(略)

低線量の照射では明らかに2つの応答を引き起こす。1つはDNA傷害で、これはすぐに修復される。もうひとつは信号伝達で、これは週にわたるような時間的な遅れをもってDNA傷害をコントロールするような細胞の生理的機能を活性化する。このような適応応答は0.1~0.2GyのX線やγ線照射でもっとも効果的で、一方0.5Gy以上ではほとんど検出されない。

=================================

つまり、DNAは傷つくだけではなくて、低線量の放射線では明確にDNAの修復が加速されるのだ。放射線のリスクとは、DNAのトータルの損傷量で考えるべきであり、

DNAのトータルの損傷量 = 放射線ゆらいの損傷量 - 修復量

のように修復の効果を見積もる必要がある。傷だけで評価すると放射線のリスクはLNT仮説のように比例的になるだけであるが、このような細胞応答を無視するのは生物学的に適切ではないのだ。

③0.2GyのX線及びガンマ線照射は、ヒトにおいて有益である。

ポリコーブらは最終的に次のようにまとめている。

=================================
ソース⇒低線量放射線に対する生物応答

0.2Gyより大きい線量では防御の活性化よりDNA傷害が大きくなり、線量-効果曲線は従来の疫学データで見られるような直線になる。
 ヒトの場合には0.2Gy以下の低LET照射後のがん発生における統計的な変化のみが、照射が有益であるか、または害悪となるかを決定する根拠となる。哺乳類の実験データとヒトの疫学データはしきい値の存在を示すのみならず、がん発生におけるホルミシス効果を示している。

===============================

これらの事実から、細胞生物学的に低線量放射線照射を危険とする根拠はないと考えられるだろう。DNAの傷だけを強調する論に何ら意味はなく、自然放射の比較や細胞の修復効果「アポトーシスの誘発等」を考える必要がある。

拍手[1回]

PR
Comment
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
無題
こんばんわ。

ブログ更新ありがとうございます。

この記事を読むと反原発を叫ぶ人達は、偏った1つのことだけをもちだして、放射能は危険だと言っていることがよくわかります。
トトロまま 2012/08/15(Wed)20:14:17 編集
[18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10]  [9]  [8
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[10/02 武市]
[09/15 朧月]
[09/08 トトロママ]
[08/22 トトロママ]
[08/17 トトロママ]
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
アクセス解析
カウンター
コガネモチ
忍者ブログ [PR]